痛風は足の親指の付け根などが腫れて痛む、その痛みは風に当たっても痛いほど激しいことから「痛風」と呼ばれます。その原因は血液中の尿酸値が高くなることで、尿酸塩が針状の結晶となって関節に沈着して、炎症を起こしたものです。つまり尿酸値が高い高尿酸血症は痛風の原因になるけれど、厳密に言うと高尿酸血症イコール痛風ではありません。関節の激痛が出現する痛風発作(関節炎)がおこった状態が痛風です。
痛風は昔からアルコールと美食が原因で発症することから「ぜいたく病」などと言われてきました。血液中の尿酸はプリン体という物質が分解されてできます。アルコール、特にビールにはプリン体が多く含まれていますので、飲みすぎると尿酸値が上昇します。それだけでなく、アルコールは尿酸の合成を促進し、尿酸が腎臓から尿へ排泄されるのを阻害することから、さらに状態を悪くしてしまうのです。また肉など美味しいものにはプリン体が多く含まれており、これらの食物を多く食べると尿酸が高くなります。
プリン体を食べたり飲んだりして尿酸が高くなるだけではありません。プリン体は筋肉を動かすときのエネルギーを伝達する物質であるATP(アデノシン3リン酸)のもとになる物質です。そこで激しい筋肉運動をすると尿酸値が上昇することになります。(ただしジョギングや水泳などの有酸素運動では尿酸値の上昇はないと言われています。)また血液の病気で白血球が血管の中で壊されたりすると、白血球細胞から尿酸が血液中に放出され高尿酸血症の原因になります。
また尿酸はこれら身体活動の結果生じる言わば老廃物で、体にとって必要なものではありません。そこで腎臓から尿中にこしだされて排泄されるのです。そこで腎臓の機能が低下した状態では尿酸値は上昇します。さらに悪いことに尿酸の結晶は腎臓に沈着して腎臓の機能を低下させてしまいます。
このように、高尿酸血症は、①プリン体摂取の過剰、②体内での生成過剰、③腎臓からの排泄低下、という三つの原因でおこると考えられ、それぞれのタイプに応じてお薬などの治療法が選択されています。
ところが、今月、イギリスの科学雑誌に、尿酸は腎臓から排泄されるだけでなく、腸から便の中に排泄されるという新しい事実が発表されました。発表したのは東京薬科大や防衛医大などの日本人チームです。発表者によると、「今までの治療法だけでなく腸の動きを対象とした生活習慣を検討することも必要で、遺伝子関連の新しい治療法の開発につながる可能性がある」ということです。高尿酸血症や痛風治療の新時代が見えてくることも期待されます。