医療あれこれ

生活習慣病に対する運動の効果
2012年3月31日

TH_LIFC005.JPG 多くの生活習慣病は肥満、内臓脂肪の蓄積が誘因となって発症することはよく知られていることです。またこれを予防し、治療するために、①食事療法(食生活を改善する)、②運動療法(適度の運動を続ける)、そして③薬物療法(検査値などをお薬で補正していく)の三つがあることもご存じの通りです。これらのうち、高血圧や糖尿病などに代表される病気を持っている方には、適切なお薬を処方し、栄養指導を通じて食生活の改善を図ることは当然の事として行われておりますし、もちろん当院でも実施していることです。しかし、②の運動療法については専門施設において以外では、系統だった指導が行われていない現状があります。具体的にどれ位の運動量を実施すればよいのか、つまりどのようなトレーニングプログラムを実践するのかという点があいまいであることが多いように思います。

 本年1月に東京で開催された第46回日本成人病(生活習慣病)学会では「職域における生活習慣病の予防・改善と運動療法」というシンポジウムが企画され、様々な報告がありました。たとえば、同じ運動を続けても十分な効果が得られる人とそうでない人がいるがこれには体質の遺伝的要因がある、しかし遺伝的に病気になるリスクが高くても計画的に運動をするとそのリスクをある程度軽減できることが明らかにされました。また具体的な事項のうち、一日の歩行時間が長い人ほど高血圧や糖尿病になる危険度や低下したことが明らかにされています。厳しい運動をするより息の切れない程度の有酸素運動がよいことも具体的なデータとして報告されています。

 以前私たちは、日本内科学会において、日常の運動をどのようにすれば効果的に体重コントロールができるか、というテーマで発表したことがあります(末廣美津子他:自主的な生活習慣改善目標設定による体重コントロールの有用性:第104回日本内科学会講演会、平成194月、大阪)。その概要は、日々の運動は他の人から指示されてするのではなく、自主的に目標を立てて実施するほうがより効果的であるというものでした。さらにその目標も、ただ「毎日、運動をするように心がける」「体重を減らすよう努力する」といった抽象的なものでは得られる効果は少なく、「毎日何時間以上歩く」や「毎日何の運動を何回する」など具体的で数値目標の含まれた計画を立てた人の方が確実に体重コントロールできたという結果でした。

 何事もそうですが、毎日継続することや、自分から進んで行うことが大切です。ぜひ無理のない体を動かす計画を考えてみて下さい。疑問に思われることがあればご相談に応じます。





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