医療あれこれ

もう一つの甲状腺ホルモン:カルシトニン ~ カルシウムの話
2012年2月16日

 前回、甲状腺ホルモン(T3T4)の話をしましたが、これとは全く別に甲状腺のC細胞という場所から分泌されているホルモンが「カルシトニン」です。カルシトニンは血液中のカルシウム濃度が上昇すると分泌され、カルシウム濃度を下げるように働きます。「カルシウムが減ると大変!」と思われる方もいるかも知れませんが、カルシウム濃度が下がるのは血液中のことであって骨のカルシウムが減るのではありません。血液中のカルシウムを下げる機序は、一つは腎臓から尿へカルシウムが排泄されるのを抑制することですが、もう一つ骨にカルシウムを取り込んでいく作用が重要です。つまり骨の形成を促進し骨を強くする作用を持っているのです。

 カルシトニンとともに血液中のカルシウム濃度や、骨のカルシウム量を調節する重要なホルモンに「副甲状腺ホルモン(PTH)」があります。副甲状腺は上皮小体ともいい、基本的には甲状腺の上下左右に4つ存在します。ここから分泌されるのが副甲状腺ホルモンで、血液中のカルシウム濃度を上昇させる作用があります。カルシトニンとは逆に腎臓から尿へカルシウムが排泄されるのを抑制し、骨から血液中にカルシウムを汲み出してしまいます。副甲状腺ホルモンが過剰に作られる副甲状腺機能亢進症では、骨からカルシウムが抜け出してしまい骨折しやすい状態になります。

CaPTH.jpg 右の図のようにカルシトニンと副甲状腺ホルモンはカルシウムの動きに対してお互いに拮抗的に働いているのです。骨からすると、カルシトニンのほうがカルシウムを増やしてくれて、骨を強くしてくれるので強力な味方になります。骨の量が減ってしまう「骨粗鬆症」という病気がありますが、この治療薬としてカルシトニンをお薬にした「カルシトニン製剤」が作られています。

 ところで歳をとるにつれ骨のカルシウムが減ってくるので、牛乳を飲んだり小魚をよく食べるなど、カルシウムを補給する必要があることはご存じの通りですが、いくら口からカルシウムを食べたとしてもそれが腸で血液中に吸収されなければなりません。ここで重要になるのがビタミンDです。ビタミンDは皮下脂肪などの脂肪を原料として生成されますが、この作用を活性化するために日光の紫外線が必要になります。最近、アメリカの白人は皮膚ガンになることを恐れて、日光に当たることを避ける人が多くなってきたそうですが、この人達は普通に日光に当たる人に比べてビタミンD欠乏症の発症が2倍であるという報告がありました。

 話の主題がずれてしまいましたが、骨粗鬆症の予防には、食事に気を付けること以外にできるだけ外出することが必要であるのは間違いありません。




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