医療あれこれ

医療の歴史 (2) 医聖ヒポクラテス
2011年12月20日

hippocrates.jpg 古代ギリシア時代の医師、ヒポクラテスは「医学の父」、「医聖」などと呼ばれています。それは彼が人々の病気を迷信や呪術、また宗教のような扱いから切り離し、科学的な医学を最初に発展させた人だからです。(写真は兵庫医科大学の玄関ホールにある「ヒポクラテスの像」です。)

ヒポクラテスは紀元前460年頃、エーゲ海の南東にあるコス島という小さな島で、世襲制の医師の子として生まれました。各地で医学を学んだ後、生まれ故郷のコス島で多くの弟子たちに医学を教えたのです。

彼は健康と病気を自然現象として客観的に観察しました。また環境の変化が人々の健康におよぼす影響なども調査研究したとも伝えられています。これは今でいう公衆衛生学や環境予防医学の始まりとも考えられます。

その業績の中で、病気の発生は人間の体の中にある水分である体液には血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁と四種類あり、これらのバランスが乱れることによって発生すると考えたのです。現代医学の理屈で考えると、血液はわかりますが、粘液や肝臓で作られる胆汁で黄胆汁と黒胆汁の二種類が何のことか理解しにくい部分があります。しかし、これらのことが述べられたのが今から二千年以上昔の紀元前であったことは驚くべきことです。

さらに病気の治療にあたっては、人の体の自然治癒力を重視しました。病気を回復させるためには、適切な食事、新鮮な空気、十分な睡眠、さらに適度の運動と休息が必要であると説いたのです。これらはすべて現代病の代表である「メタボリックシンドローム」の予防・治療につながる画期的なことであったことはいうまでもありません。

ヒポクラテスはこうして医学的現象の観察と分類を通じて、医学が科学として発展していく基礎を作った人です。しかし彼が真に医療の歴史の中での重要人物として語られているのは、二千年以上の長い年月、医療者の道徳律とされてきた「ヒポクラテスの誓い」を書いた人であったことです。このことは次回の医療の歴史で説明したいと思います。




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