医療あれこれ
肥満、痩身に関係する遺伝子を調査研究
同じような生活習慣(食事や運動の習慣)をしている人を比べた時、太っている人も痩せている人がいますが、太ったり痩せたりするのは生活習慣の違いだけで違いが出てくるのではないことを調査する目的で、様々な体系の健康人における遺伝子領域の相違を調べた研究結果が公表されました。これまで肥満の原因となる遺伝子領域はある程度判っていましたが、健康的に痩せる遺伝的要因については明らかではありませんでした。今回、調査研究をおこなったのは英国ケンブリッジのWellcome Sanger Instituteの研究者らでPLoS Genet(2019 Jan 24;15:e1007603. doi: 10.1371/journal.pgen.1007603)に報告しました。
研究対象はBMIが18未満の健康な痩身者1,622人で、他の研究調査から得られた小児期からの重度肥満者1,985人および正常体重者1万433人のデータを遺伝的構造において比較検討しました。その結果、肥満に関する遺伝的リスクスコアは肥満者群で標準体重者群に比べ高かったが、痩身者群では逆に遺伝的リスクは低いことが明らかとなりました。さらに痩身者群は肥満リスクを増加させる遺伝子変異をほとんど有していないことが判りました。
一般的に太りすぎはよくないと言われますが、肥満のままでいる人は怠惰で健康意識が低いと考えられがちです。しかし今回の調査結果からは、肥満の人がなぜ痩せようとしないのかというと、その人の意思の強さであったり生活環境などの影響はあまり関係がないということが考えられます。共同研究者の一人で、英国ケンブリッジ大学のFaroqi氏は「肥満者に対して太ってはいけないと批判することは簡単だが、肥満になる原因は非常に複雑であることが科学によって示された。好きなものを食べていても健康的で痩せたままの人がいるけれど、このような人は肥満リスクを高める遺伝子の影響をあまり受けていないからであり、意志が強かったり、健康への意識が高かったりするからではない。われわれが考えているよりも自分の体重をコントロールすることは容易ではない」とコメントしています。つまり怠惰で健康意識が低いから肥満になるというのは間違いであることを示す調査結果だそうです。