医療あれこれ
肥満と肥満症
1月27日付のこの項で、肥満の人は脳梗塞になりやすい ことをご紹介しました。この記事の補足ですが、一般に「肥満」といわれる状態と、「肥満症」と診断される状態の相違を説明します。
ご紹介したように、「肥満」は簡単にいうとBMIが25以上を肥満と定義しています。一方「肥満症」は、日本肥満学会の定義では、内分泌性肥満(ホルモンの異常で肥満が発生しているもの)や遺伝性肥満など、明らかな原因がある場合を除いた肥満状態で、何らかの健康障害や身体的異常があるものをいいます。
まず健診ではお腹周り(臍周囲径)が男性で85cm以上、女性で90cm以上の時に判定されるような内臓脂肪蓄積がある場合です。内臓脂肪は皮下脂肪と違って動脈硬化や血栓症などを高度に合併します。この状態はご存知のようにメタボリックシンドロームの診断の必須事項です。
一方、関連疾患としては、
①耐糖能異常(糖尿病関連の状態)
②コレステロールや中性脂肪などの異常である脂質異常症
③高血圧
④高尿酸血症、これが原因である痛風
⑤狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患
⑥妊娠合併症
⑦前々回ご紹介した脳梗塞
⑧肥満関連腎臓病
⑨睡眠時無呼吸症候群
⑩整形外科的疾患(変形性関節症や腰痛症)
が含まれます。これら関連疾患のうち、睡眠時無呼吸症候群や整形外科的疾患は、脂肪細胞が増加した状態に発生するものであり、その他の疾患は脂肪細胞の質的異常と定義されています。
肥満症の治療としては、明らかな原因疾患がある場合は当然この治療を第一におこなうことが重要ですが、生活習慣の改善によって、体重、BMI を是正することにより、日常生活動作(ADL)の低下、変形性膝関節症または変形性股関節症など整形外科的疾患による生活の質(QOL)低下を改善することができることが多いとされています。
一方で日本老年医学会では、肥満症の高齢者では減量により,脂肪量とともに骨格筋量が減少する可能性があり、別の好ましくない状態を引き起こすことを注意喚起しています。これに対して、適切なカロリーを設定し,運動を併用することにより骨格筋量または身体機能を低下させることなく減量が可能であると述べています。