医療あれこれ

睡眠時間が短いと脱水になる?

 睡眠時間と様々な病気の関連が知られていて、十分な睡眠は健康のもとと一般的に考えられています。このたび睡眠時間が短い人は長い人に比べて脱水になる可能性があるという報告が米国のペンシルバニア州立大学の研究者からありました。(Rosinger AY. et al. Sleep: 2018119日オンライン版)

 研究対象は、糖尿病などの病気がない健康な米国人11,353例と中国人8,766例です。それぞれの睡眠時間が8時間の人と6時間以下の人に分けて尿量の変化による体内水分変化の目安を尿比重で比較検討しました。尿比重が増加すると体内水分量が減少、つまり脱水傾向になっている可能性があるというものです。

 その結果、米国人では睡眠時間が8時間の群に比べて6時間以下の群では尿比重が有意に上昇し、体内水分量が不適切になるリスクが59%上昇しました。中国人でも同様の傾向が認められたといいます。

 脱水に陥るリスクの一つとして、尿量の変化があります。いうまでもなく尿量が多いと体内の水分が排泄され脱水状態になるわけですが、この尿量を調節しているホルモンが、脳下垂体の効用から分泌される抗利尿ホルモン(バゾプレシン)です。バゾプレシンが分泌されると尿量が抑制され、逆にバゾプレシン分泌が低下すると抑制が効かなくなり尿量の増加がおこり、その結果として脱水傾向が発生するのです。

 研究者らは、「バソプレシンは終日分泌されているが、睡眠サイクルの後半に短時間でより多量に分泌される。そのため夜間の睡眠時間が短いと、バソプレシンがより多く分泌されるタイミングを逃してしまう可能性がある」と指摘しています。

脱水は認知、気分、体力などに悪影響を及ぼし、慢性の脱水は尿路感染症や腎結石などの危険性を高める可能性があります。「睡眠不足で翌朝、体調不良を感じた人はできるだけ水分を多く摂ることが対策の一つだ。」とアドバイスしています。