医療あれこれ
健康生活で寿命が延長
アメリカで、「健康的な生活習慣をしていた人は寿命が延長した」といういわば当たり前のことのように思えますが、これを大規模研究で調べたという報告がありました。(Circulation 2018年4月30日オンライン版)
公表したのはアメリカHarvard THのYanping Liらで、研究対象者はアメリカ成人の男性4万4千人、女性7万9千人の約12万人です。この人たちを34年間追跡調査し、健康的な5つの生活習慣を継続した人は、しなかった人よりも10年以上寿命が延長したというものです。対象者や調査期間の規模からして説得力のある結果だと思われます。
5つの健康生活とは、①健康的な食習慣、②禁煙、③身体活動、④正常体重の維持、⑤適度の飲酒 です。すべてこれまで健康によいと言われているものばかりですが、統計的に処理して結論を導くことができるように統一した形で長期間にわたって観察されたところに意義があります。
それぞれの生活習慣のうち①食習慣は、野菜、果物、ナッツ、全粒穀物、多価不飽和脂肪酸、ω3脂肪酸はそれぞれ1日の推奨量を摂取すること、逆に赤身肉・加工肉、糖添加飲料、トランス脂肪酸、ナトリウムについては摂取量を制限することとなっています。③の身体活動は、中等度~強度の運動を1日30分以上おこなうというものです。
34年間、観察期間中に死亡した人は4万2千人あまりいました。長期間にわたる観察期間なのでこの程度は当然かと思いますが、死亡原因として、がん死亡が1万4千人、心臓血管疾患によるおのが1万人あまり確認されています。単純に平均寿命をみると、5つの生活習慣すべてがおこなえた人は女性が93.1歳、男性は87.6歳で、これに対して5つすべてやらなかった人の平均寿命は女性79.0歳、男性75.5歳と推計されました。5つの健康生活を続けることにより女性で14.1年、男性で12.1年の平均寿命延長が認められたことになります。
日本とアメリカで平均寿命を比べると、男性女性あわせて日本は83.8歳であるのに対して、アメリカでは78.7歳と、日本に比べてアメリカの平均寿命が短いとされています。特に昨年末までの調査で2年連続アメリカの平均寿命が短縮傾向にあることが報告され、これは日本を始めとした他の先進国の状況とは異なります。またアメリカの若年者の死亡数が多いことが問題となっています。平均寿命だけがその国の健康度を示すものではありませんが、これらのことがアメリカにおいて今回のように大規模な調査研究をおこなう必要性を示していると思われます。