医療あれこれ

改めて生活習慣病を考える

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 この「医療あれこれ」の最初の方でも述べましたが、生活習慣病は規則正しい生活習慣を守っていれば発症しないというものではありません。そもそも以前は「生活習慣病」とは呼ばず、1955年頃から当時の厚生省が「成人病」ということばを使い始めたものが生活習慣病概念の始まりです。40歳~60歳の働き盛りの人に発生しやすい悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患などの慢性疾患がその代表的な疾患であると定義されました。しかし、これら疾患群の原因の多くは成人になってから発症するのではなく、子供の頃からの乱れた生活習慣が基本になっていることから、1996年から「生活習慣病」という用語を使うようになったのです。2002年に公布された健康増進法の木庭は、国民の健康寿命を延ばし、生活の質を向上させることであり、そのために国民一人一人が健康増進に努めることが義務付けられています。

 しかし、当然のように規則正しい生活習慣を送っていても生活習慣病を完全に予防することはできません。これまでに何度も説明しましたが、乱れた食生活や運動をしない、肥満であるなどをしていても2型糖尿病になる人と全くならない人がいます。この違いは何かというと遺伝的要因です。糖尿病が遺伝病というのではなく、乱れた生活習慣を送っていると糖尿病になりやすいDNAを持っている人とそうでない人がいるということです。

 もう一つ生活習慣の改善だけではどうにもならないのが「加齢」という問題です。これは人間の生物学的寿命は115歳ぐらいと決まっていて、いくら完璧な生活を送ったとしてもそれ以上は生きることはできません。最近よく言われる平均寿命や健康寿命の延伸はこの115歳の範囲の中での話です。これに関連するのが高齢者と関連したフレイルティサルコペニア、これらを含むロコモティブシンドロームの問題は最終的に生活のために介護を必要とする疾患の基本的原因として問題となってきます。

 人間の寿命は決まっているのですから、その範囲内でできるだけ質の高い生活を送る、つまりすべての意味で健康にすごすことが理想的な人生を送る究極の目標です。この項でご紹介しましたが、予防医学や未病といった問題は、医療として健康人生を支える手段の大きな部分を占めているのだと考えられます。

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引用文献:寺本民生 成人病と生活習慣病、日本医師会雑誌(2016年)146P.1381.