医療あれこれ
無痛性心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓の筋肉(心筋)に血流を送る冠動脈が閉塞して心筋が酸素欠乏になり障害されてしまう病気です。従って冠動脈閉塞が発生すると同時に激しい胸痛が発生する特徴があります。
しかし中には心電図や血液検査で客観的に心筋梗塞の病態が発生しているのに、この胸痛が伴わない例があり、これが無痛性心筋梗塞と呼ばれるものです。
胸痛がない原因としては、心筋梗塞が発生する範囲が狭くて病気の程度が極めて軽度な場合や、何らかの原因で痛覚を認識する限界が変化して痛みを感じない場合が考えられます。とくに後者のように感覚が低下している場合として、高齢者に発生した心筋梗塞に胸痛がない場合がしばしば認められます。高齢者の疾患では若年者に比べて症状が定型的ではないことが多く、この無痛性心筋梗塞もその一例です。
さらに糖尿病合併症の一つに神経障害がありますが、糖尿病の人はこれが原因で無痛性心筋梗塞が起こることも考えられます。さまざまな報告があるようですが、無痛性心筋梗塞を起こす症例は34~42%が糖尿病症例であると言われています。病気としては糖尿病の他に慢性腎不全や高血圧の例で無痛性心筋梗塞を起こしやすいことも知られています。
心筋梗塞はことによっては致死的なことにもなりかねません。高齢者の場合は別としてとしても、糖尿病や高血圧などは日頃から適切な治療を続けておくことが重要であると思われます。