医療あれこれ
血糖値が高いとガンや認知症になる?
最近、新聞にも報道されていますが、糖尿病になってはいなくても糖尿病の一歩手前の血糖値が高い状態が続くと、ガンになるリスクが正常の人に比べて1.2倍高くなることが、国立ガン研究センターから公表されました。46歳~80歳の男女約3万人について25年間追跡調査したもので、今の時点から1~2ヶ月前の1~2ヶ月間における長期間の血糖レベルを示すヘモグロビンA1c(HbA1c)の値とガン発症率の関係をみたものです。
HbA1cは正常では5.0~5.4%でこの群のガン発症リスクを1としたとき、糖尿病になる手前の状態であるHbA1c 6.0~6.4%の群におけるガン発症リスクは1.28、HbA1cだけでみると糖尿病と診断されるHbA1c 6.5%以上の群では1.48となるというのです。
この理由として、高血糖が続くとガン発症遺伝子に変化がおこるというのです。高血糖状態が遺伝子の本体である細胞のDNAに傷をつけガン発症につながるということです。またガン細胞の増殖には多くの糖分が必要で、高血糖状態ではガン細胞増殖を促進する可能性もあるといいます。
一方、日本における長期間にわたる疾患の推移を疫学研究するというと、町全体の住民を大将として疾患発症を検討している九州大学の久山町研究が想い浮かびます。(久山町研究についてはこの項でも以前にご紹介していますので参照して下さい:久山町研究 ← クリックするとご覧になれます。)この久山町研究でも、糖尿病の人のガン発症率は正常の人に比べて2倍以上高いことが報告されています。さらに糖尿病の人は、認知症(アルツハイマー病)になる確立も2倍以上高いことも明らかにされています。
高血糖状態や糖尿病というと、その合併症である細小血管障害や、脳梗塞・心筋梗塞などの大血管障害があることはこれまでにもご紹介してきましたが、ガン、認知症の発症リスクも考慮に入れる必要があることを示すものと考えられます。