医療あれこれ
水銀血圧計
血圧を測定するために用いる血圧計は、これまでは水銀がガラス管に入った水銀血圧計でした。 これは血圧の圧力の強さは水銀柱を何ミリメートル押し上げるかで表示されるもので、血圧の単位はmmHgですが、Hgは水銀の元素記号です。水銀を英語でいうとmercuryですが、ラテン語でhydrargyrumということからHgと名付けられています。
血圧の測定は、カフ(袋状になった帯)を上腕に巻きつけ、送気球から空気をカフに送り込むことによりカフ圧を上げ、少しずつ落としていく過程で、肘関節の動脈にあてた聴診器で血管の音を聞きます。血管音が聞こえ始めた時の圧力が上の血圧(最大血圧)つまり心臓が収縮して血液を送り出した時の血圧(収縮期血圧)、血管音が聞こえなくなった、または急に弱くなった時の圧力が下の血圧(最小血圧)つまり心臓が拡張して心室に次に送り出すべき血液を充填させている時の圧力(拡張期血圧)です。この時、聴取する血管音をコロトコフ音と言いますがこれはこの音の発見者がロシアの軍医ニコライ・コロトコフであったということから命名されたものです。通常、水銀柱の目盛は2 mmHgごとに区切られていますので、血圧の表示も偶数で表示されます。ただし近年使用されている自動血圧計では1 mmHgごとの表示になっています。
ところで、この水銀血圧計についてこれまで日本高血圧学会などでは、今説明した水銀血圧計による聴診法が正確であることから推奨されていましたが、2020年以降、水銀の輸出入などが原則禁止されることになったため新たな対応が必要との見解が示されました。水銀に規制が設けられる理由は、水銀は昔にはさまざまな病気の治療薬として用いられたこともありましたが、現在ではもし体の中に慢性的に入った場合、水銀中毒として神経系や腎臓などに障害をもたらす毒性のあるものと考えられているからです。現在多くの医療施設で使用されている水銀血圧計は廃棄や交換をおこなう必要はないものの、新規に導入する場合はこれを推奨しないと高血圧学会は見解を公表しています。