医療あれこれ
COPDと口すぼめ呼吸
11月14日は「世界COPDデー」でした。COPDとは慢性閉塞性肺疾患のことで、肺を構成している肺胞が破壊され、気管支の慢性炎症が進行していく病気です。慢性閉塞性肺疾患の英語名称の頭文字をとってCOPD(シー・オー・ピー・ディー)と呼んでいます。以前は、肺気腫という病気と、慢性気管支炎という病気の二つに分けられていましたが、特徴が共通していることから、COPDという統一した病名になりました。「世界COPDデー」は、世界的にこの病気を知ってもらい、注意を喚起することを目的として設定されました。吹田でも市民病院を中心にさまざまなイベントが開催されました。
COPDの特徴は、息を速くはき出すことができないことです。「息をどれだけ速くはき出すことができるか」を示すのが呼吸機能検査で「一秒率」という項目で、簡単にいうと、一秒間にどれだけ息をはけるか、を示したものです。この一秒率が低下した状態を閉塞性障害といい、この状態が慢性に進行してくるのが慢性閉塞性肺疾患、つまりCOPDです。原因は喫煙や有毒ガスの吸入などですが、長年の喫煙という乱れた生活習慣が病気を起こすことから、生活習慣病としてとらえられています。
一方、口すぼめ呼吸は呼吸テクニックの一つで、口笛を吹くように口をすぼめて息をはくと、息をはく時間が長くなり、ゆっくりとした呼吸リズムになります。COPDの患者さんに対して行う呼吸リハビリテーションの一つですが、患者さんは誰からも指導を受けていなくても自然に口すぼめ呼吸が身についていることが多く見られます。口をすぼめてゆっくり息をはくと、呼吸が楽になると直感的に体感し、無意識のうちに口すぼめ呼吸をなさっているのです。
健康な人でも、激しい運動後や、緊張した時などに無意識に口すぼめ呼吸となっていることがよくあります。理論的には普通の呼吸よりも呼吸への負担は大きいとも思われます。しかし、その代償を払ってもなお、口すぼめ呼吸の方が「呼吸が楽だ」と感じて行うことにより、呼吸困難という不安を緩和している可能性があると考えられています。
なお、一秒率を調べる呼吸機能検査はスパイロメーターという機器を使います。当院でも必要に応じてこれを使用して検査を行っております。