医療あれこれ
医療の歴史(44) 古来からの薬物:薬用植物
酒のほかに古来から薬物として用いられたものの中心は、草木の皮、根、果実や葉など薬用植物といわれるものでした。富士川游著、日本医学史綱要には薬用植物として葛(くず)、蕉青(カブラ)、蒲黄(ガマの花)、薄(ススキ)、葦(ヨシ)、比々羅木(ヒイラギ)、樺(カバ)、桃、赤酸醤(ホウヅキ)、柏、樫、真堅木(マサヤキ)、楓(カエデ)、挙樹(クヌギ)、羅(ラ;ガーゼのような薄い布?)、檜(ヒノキ)、茜(アカネ)、葡萄(ブドウ)、海布(メ;ワカメなどの海藻)、蜀椒(ナルハシカミ;山椒)、胡桃(クルミ)、竹などがあり、中でも蒲黄や桃は治療に用いた記録があると述べられています。一方、江戸時代(1558年)に佐藤方定(佐藤神符満)が著した備急八薬新論には、人参、附子(ブシ)、原朴(ホウノキ)、甘草(右の写真)、胡椒、丹砂、巴豆(ハズ)、大黄が挙げられています。この中には丹砂のように鉱物も含まれていますが、これら八薬は神代から治療に用いられるとのことです。
典薬寮の付属施設である薬園では、薬園師の統率でこれらの薬用植物が薬戸により栽培、管理されていましたが、薬園は朝廷の支配が及ぶ各地に存在したようです。