医療あれこれ

医療の歴史(36) 医薬の祖―少彦名命

 神話の中で、大国主命のパートナーとして全国をめぐって国土を開拓した神とされている少彦名命(すくなひこなのみこと)は、国造りの他、医薬、酒造り、温泉療法などを開発したことから、日本における医薬の祖とされています。

 少彦名命は、身体が小さく、その後の御伽草子に登場する「一寸法師」のルーツとされています。大国主命との出会いは、出雲の海のかなたから光り輝きながらやって来たと言われます。大国主命が出雲の祖神から「少彦名命と兄弟の契りを結び、国造りを進めよ」と言われ、コンビを組んで全国を巡り国造りをおこないました。この中で、土壌を改良し、肥料を用いて農業をする技術の指導をしたことや、病気を治す薬の一つとして酒造りの技術を普及させ、「常世より来た水」と考えられていた温泉を用いて病気の治療をおこない、病気の回復、健康増進の方法を拡めたと伝えられているのです。愛媛県の道後温泉の開発はその典型だそうです。sino.jpg

 全国に少彦名命を祭った神社がいくつかありますが、その中で特に有名なのが大阪の道修町にある少彦名神社です。(写真)道修町は大阪で「薬の町」として知られ、周辺に薬品会社などが並んでいます。地域では少彦名神社は「神農(しんのう)さん」と呼ばれ、信仰を集めています。ただし、神農氏は古代中国の皇帝で医薬の神とされており、少彦名命のことではありません。道修町の少彦名神社は、少彦名命と神農氏の二神をご祭神としていることからこのように呼ばれているのだそうです。