医療あれこれ

医療の歴史(32) DNAの構造解析

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 遺伝子研究においてDNAの構造解析が重要です。初めにDNAの構造解析を行ったのはイギリス・ロンドンのキングス・カレッジにおけるモーリス・ウィルキンス(19162004)です。彼が用いた手法はX線回析といって、結晶にX線を照射すると感光板に影が映し出されるというものです。結果としてDNAは円形で中央に2本の線が交叉するような形をしていました。

 1951年、ウィルキンスがその成果を学会で報告する講演を聞いた若いアメリカ人研究者のジェームス・ワトソン(1928~ )は、もともと遺伝子研究をしていたわけではなかったのですが、遺伝子研究に興味を持ちました。イギリスのキャンベンディッシュ研究所に移ったワトソンは、X線回析が専門のフランシス・クリック(19162004)に出会います。

 当初クリックは、イギリスでは先に他の人が始めた研究の途中結果を先取りして最終結論をだすことは紳士協定に反するとDNAの共同研究にあまり乗り気ではありませんでしたが、ワトソンの熱意に心を動かされ、二人は共同研究を始めます。ウィルキンスの成果を基に試行錯誤を重ねた結果、ワトソンとクリックの二人はついについにDNAの二重らせん構造を解明したのでした。図はワトソンとクリックが1953DNAの構造を世界で初めて学術雑誌ネイチャーに発表したものです。(Watson JD, Crick FH: Nature. 1953 Apr 25;171(4356):737-8.)このDNAモデルは医学上20世紀最大の発見といわれ、その後の遺伝子工学における発展の基礎を作ったのでした。1962年、ワトソン、クリック、そしてウィルキンスはその功績によりそろってノーベル賞を受賞しています。

 DNAの二重らせん構造発見からちょうど50年後の2003年、人間の遺伝子情報(ヒトゲノム)解析が完了しました。これにより今後さらに人の発生や文化など基本的な生命現象の解析、疾患の新しい治療法開発などがますます発展するものと期待されます。