医療あれこれ

医療の歴史(30) メンデルの遺伝法則

 現在の医療において、遺伝子治療など遺伝学に立脚した医療は先端医療技術の一つになっています。その遺伝についての考え方を最初に解明したのがオーストリアの修道士グレゴリー・メンデル(18221884)です。彼は15年間にわたってエンドウマメの交配実験をつづけて、1865年、有名なメンデルの遺伝法則を発見し学会や学術雑誌に発表しています。しかし当時この重大な発表をを理解し受け入れられることはなく広く認められたのは20世紀に入ってからのことでした。

mendel.jpg

 それまで、子は親に似るという遺伝の概念は当然知られていましたが、両親の性質が入り混じって子に伝わるとしか考えられておらず、系統的な理論はわかっていませんでした。メンデルが明らかにしたものの一つに次のようなものがあります。エンドウマメには丸いマメとしわのあるマメがあるのですが、これをかけ合わせると丸いマメしかできません。しかし同じ世代の丸いマメどうしをかけ合わせると次の世代には丸いマメ3つに対してしわのあるマメが1つできました。右の図のように、双方の親がもつ遺伝要因を子に伝えるためにはAAAaaaなど2つづつの因子が必要で、両親から一つづつAあるいはaをもらって子ができると考えたのです。そしてAが一つでもあると丸いマメになり、aaのようにAが一つもないとしわのあるマメができるとすると交配実験で得られた事実を説明することができると考えました。

 これらのことは今では中学、高校の理科・生物にでてくることで遺伝の基本ですが、これを発見したのは医学や生物学の専門家ではなく、修道院の裏庭でエンドウマメを栽培していた修道士であったことは興味深いことです。そして彼のこの発見は20世紀になって遺伝子という概念に統一され、DNAが遺伝子の本体であること、そしてそのDNAの基本構造が解明され、遺伝技術を用いた医療へと進歩していったのです。