医療あれこれ

多血小板血漿(PRP)療法

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 血小板は、血管壁が破れて出血がおこったとき、応急的な反応として傷口に粘着したり血小板同士が凝集したりして止血に働く血球です。実際の止血反応は血小板だけの止血血栓は丈夫ではないため、血液中の液体成分である血漿に含まれるタンパク質である凝固因子がフィブリンという塊を作って血小板の止血血栓を補強して止血機構が進行していきます。

 一方で、血小板に含まれる顆粒中にはさまざまな成長因子つまり組織を増殖させる作用のある因子が含まれます。何らかの血小板作用活性化がおこると、血小板の増殖因子により血管壁が増殖して動脈硬化の原因になっていくことが以前より知られていました。しかし血小板の増殖因子には創傷治癒作用があるものも含まれ整形外科領域で損傷した関節の靭帯を修復していく作用を利用したものが多血小板血漿(PRP)療法です。

 これまでPRP療法としてよく知られていたのが、齢を取って弾力性が低下した皮膚を若返らせるといった美容形成外科での利用でしたが、美容よりもっと切実な関節損傷に使用する試みがなされるようになってきたのです。傷病者本人の血液を採取してPRPを作成し治療に用いるもので、他人の血液を使用しないわけですから、拒絶反応が発生する可能性が低いと考えられます。PRPの作成は単純で、抗凝固した全血を低速回転(一分間に1,000回転)で遠心分離した上澄みがPRPです。赤血球や白血球は大きな細胞ですから沈殿してしまい、小さい血小板だけが浮遊した多血小板血漿(PRP)が上澄みに残るという理屈です。

 ただし現時点では、PRPは保険適用ではありませんから治療に際しては実費を支払う必要があること、またPRPの安定性など解決すべき問題が残り、今後検討されていく必要があるものです。「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」にはPRP治療は届出申請が必要であることが示されています。

引用文献 金森章浩 日本医事新報No.48262016.10.22