医療あれこれ
新型コロナウイルスを指定感染症に
中国の武漢から始まった新型コロナウイルス感染症を1月28日から指定感染症とすることが示されました。指定感染症とは政令で1年間に限定して重症の感染症に準じた対応がなされると規定された感染症です。
感染症は「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」、一般に「感染症法」と呼ばれる法律で規定されているものですが、感染者に対する早期治療と感染症発生動向調査により、社会全体の感染症予防を推進する目的で制定されたものです。この法律ができる前に決められていた「伝染病予防法」では、感染症患者さんが発生した時にこれを隔離して非感染者から切り離して病気の蔓延を防ぐことに重点がおかれていましたが、一般の病気と同様に医療保険により個人の治療を効率的に推進することに趣旨が進歩しています。
感染症法では重点的な疾患を1類感染症~5類感染症の類型に分類しています。1類感染症は、数年前問題になったエボラ出血熱や痘瘡、ペストなど危険性が極めて高い7疾患が含まれ、原則として指定医療機関へ入院し治療を受けるよう規定されています。
2類感染症には、今回の新型コロナウイルスと同類のコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)など7疾患が含まれ1類に準じた対応が指示されているものです。結核なども2類感染症に含まれます。
3類感染症も1類、2類に次ぐ重症感染症でコレラ、赤痢など5種類の感染症が含まれ状況に応じて入院、飲食業など特定業種への就労制限が含まれます。
また4類、5類感染症は1~3類感染症に比べると深刻なものではありませんが、注意を要するものが含まれます。
新型コロナウイルス感染症が規定された「指定感染症」は今回あらたに問題化した感染症であり今後の動向を注視する必要があることから1年間の期間限定ですが、重症である1類~3類感染症に準じた対応が求められるものです。
今回の感染症ですが、1月27日午前の時点で、感染者数は2744人、死亡者数80人と報道されていますが、刻々増加の一途をたどっています。また一人の患者が多くの人を感染させるという「スーパースプレッダー」が出現するなど大問題となっていることには違いありませんが、最重症の疾患かというと現時点では明らかではありません。死亡者のほとんどが高齢者であり、健康状態が良くなかったという報道があります。たとえ肺炎で入院しても若年者はすでに軽快して
退院しているそうです。一方で、治療にあたっていた医師の死亡例も報道され衝撃的な事項でしたが、詳細は明らかでないものの、この医師は感染拡大のため過重労働となるなど健全な状態でなかったのかも知れません。
感染拡大の封じ込めは容易ではありませんが、たとえ感染があってもそれにより致死的状態に陥ることにならないように対策しておくことが必要です。つまり手洗い、うがいの励行など通常の感染予防につとめるとともに、過労や睡眠不足などを避け、常に健康な状態を保っておくことが最も重要なことと思われます。