医療あれこれ
南米ペルーでギラン・バレー症候群が流行
ギランバレー症候群は急性に手足の筋力低下から全身筋肉の脱力を呈する疾患で、日本では人口10万人あたり1~2人程度の発症頻度で比較的まれな疾患です。南米ペルーの保健省発表によるとそのギランバレー症候群が増加しているそうで、地元メディアによると今月には135人が入院して3人が死亡したといいます。
この病気は、左右対称性の下肢脱力による麻痺から始まり、進行して上肢の麻痺から全身に拡がり最終的に呼吸筋麻痺のため人工呼吸器を装着しなければ死に至るものです。麻痺症状は発症から数週間~1ヶ月以内にピークに達するのですが、このピークを越えると次第に改善し、一部の例をのぞいて経過の良い症例では後遺症を残す事なく治癒します。治療としては血液中の液体成分の一部を入れ替える血漿交換療法や免疫グロブリン大量投与などがありますが、これらによりピーク時を乗り切れれば経過は悪くありません。自発呼吸ができないほどの重症患者さんが内科的治療により治るという病気であることから、不治の病気も多い神経系疾患のうちでも予後が良い部類にはいるでしょう。難病に見えますが、医療費の公的補助対象となる疾患には指定されていません。
発症の数週間前に、消化器症状をきたすカンピロバクターなどの細菌感染やサイトメガロウイルスやエプスタイン-バーウイルス(EBウイルス)などのウイルス感染が先行する場合があることが知られています。これらのうちでもカンピロバクターは食中毒の原因菌でもあり、腹痛・下痢などの症状には注意する必要があります。またサイトマガロウイルスやEBウイルス以外の同定されていないウイルス感染によるカゼ症状が出現することも知られています。ペルーの日本大使館も旅行などで現地を訪れる際にはこれら感染症に十分注意するように呼びかけています。ただしこれらの感染症は発症の引き金になる可能性があるということであって、ギランバレー症候群自体は感染症ではないということを念のため申し添えます。