医療あれこれ

昼間の眠気はアルツハイマー病の徴候

sleep.JPG 以前にこの項で、睡眠不足は脳にアミロイドβというタンパク質が異常に蓄積してアイマー病になる可能性があることをご紹介しました(2018429日医療あれこれ)。今の話題はこれに関連することです。夜間、十分な睡眠が取れているかどうかは睡眠時間だけでは評価できません。浅い睡眠など良好でない睡眠であればたとえ長時間寝ていたとしても十分な睡眠が取れているとはいえないからです。昼間眠気があるかどうかは、普通の状態で睡眠の量も質も両方とも良好かどうかの目安になると思われます。このほどアメリカの研究者たちが、昼間に眠気を感じる人は、アルツハイマー病になるリスクが高いという研究結果を報告しました。Spira A.P. et al. Sleep, zsy 152, https://doi.org/10/1093/sleep/zsy152 (05 Sept. 2018)

 研究の対象は認知症ではない地域住民123人、研究開始時の平均年齢は60.1歳で、昼間の睡眠と昼寝の習慣を調査し、15年以上経過してから、脳内のアミロイドβ蓄積をPET画像により調べたものです。15年前、昼間に眠気があった人は24.4%、昼寝の習慣があった人は28.5%でした。

 データ解析の結果、昼間の眠気がない人に比べて眠気がある人の方がアミロイドβの蓄積が有意に高いことが判りました。一方で昼寝の習慣の有無については、有意な関連はなかったそうです。

 著者らは、「睡眠不足がアルツハイマー病発症のリスクであることがわかった。しかし、15年前の時点で、すでにアミロイドβの蓄積があり、そのことが原因で睡眠不足がもたらされ、昼間の眠気につながった可能性がないとは言い切れない。」と述べています。また昼寝については、昼寝をして夜間の睡眠不足を補っていると思っていても、睡眠状態不良を解消するには不十分ということになるのでしょうか。

 別の動物実験で、睡眠を強制的に制限した動物の脳にはアミロイドβが蓄積していることを調べた結果も報告されており、今回の人を対象とする15年かけた実験結果を支持するものと考えられます。そして十分な睡眠はアルツハイマー病の予防対策として重要と考えられます。