医療あれこれ
ドッグセラピー
近年、ペットとして犬や猫を飼っている人たちが増えてきました。社会生活に疲れた人間たちと違って、邪心がないペットたちと触れ合うことは、飼い主にとって心の安らぎとなることは間違いないでしょう。その中でも最も身近な動物である犬が、実際に介護や医療の分野で活躍しており、犬が病気の治療にも関わることから「ドッグセラピー」と呼ばれています。ドッグセラピーで活躍する犬は訓練を受けたもので、その犬を扱う人にも、動物の感染症予防などの知識までもちあわせることが求められる認定資格があります。視覚障害の人達の眼となって活躍する盲導犬などはその典型的なものでしょう。
また犬に限らず、多くの種類の動物が介護・医療に関わります。①福祉施設などにおいて情緒的安定やリクリエーションを目的にした動物介在活動、②子供たちに動物とのふれあい方や命の大切さを伝えることなど情操教育を中心にした動物介在教育、さらに③病気や外傷で低下した心身機能を回復させるリハビリテーションなどの動物介在療法があります。日本では主として①動物介在活動や②動物介在教育がおこなわれていますが、欧米では③動物介在療法が中心で、病気に対して薬の処方をする代わりに「ペットを飼うこと」が処方として認められているといいます。
このようなアニマルセラピーの歴史は古く、古代ローマには負傷兵士のリハビリテーションに馬が用いられたそうです。乗馬していると自然に軽い全身運動になるからです。しかし犬がアニマルセラピーに登場するのは時代的には新しく、20世紀半ばになってアメリカの空軍療養所で、負傷した兵士のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療が目的だそうです。
動物に癒されると、人の脳内にはオキシトシンという幸せを感じるときに分泌されるホルモンが活発になるという事も分かっているそうです。さらに人と犬が触れ合うと、犬のオキシトシン分泌も活発になるという研究結果も報告されています。超高齢社会の日本にとって、介護・医療に対して動物たちがさらに活躍していくことが望まれます。
引用:タイムズ(大阪府医師協同組合),No.265,2018.9月号,02~04.