医療あれこれ
体重減らすと筋肉、骨量も減るのか
中年以降の過体重が生活習慣病の重大な危険因子になることはよく理解されているところです。そこで体重を減少させるために食事療法などをおこなうと、体重は減っても同時に筋肉量が減って筋力が低下してくる、つまり以前にご紹介したサルコペニア(2013年6月10日付)の状態になるのではないか?また同時に骨の量も減りわずかな荷重で骨折の危険度が増すのではないかという心配もなされています。この懸念は、高齢者が3分の1を占めるといわれるアメリカなどでよく知られたことでした。日本においても年々、肥満とされる高齢者の割合が増加してきています。以前にこの項でも「フレイルはメタボより危険?」(2017年11月19日)でご紹介しましたが、日本では高齢になるとメタボリックシンドロームのような過体重よりむしろ筋肉量が減ったりして日常の生活動作に影響がでる方が介護の問題などを引き起こすと考えられています。
この度、過体重をコントロールするため食事療法だけではなく、運動療法に工夫を加えて実施することにより、身体機能を維持または改善しながら体重をコントロールできる方法のあることが権威ある医学雑誌に報告されました。(Dennis T. Villareal et al. N Engl J Med
2017; 376: 1943-1955)
代表研究者はアメリカのテキサス州ヒューストンにあるベイラー医科大学で代謝内分泌学、高齢者医療の教授です。BMIが30以上と肥満体型で65歳以上の実験対象者を、何もしない対象群、カロリー制限などの食事療法と軽い運動をする有酸素運動をした群、食事療法と筋力強化など筋肉に抵抗(レジスタンス)をかけるレジスタンス運動をした群、およびこれら2種類の運動プラス食事療法をした群の4群に分けて比較検討しました。その結果、食事療法および有酸素運動とレジスタンス運動を併用した群の人に体重減少の効果が最も認められ、筋力についてはわずかに低下したもののほぼ維持できたという結果でした。
高齢者においては食事療法で体重減少を達成したとしても、筋力低下や骨の脆弱性が生じてしまうと、転倒、骨折の原因となり日常生活動作に影響が出てしまいます。やはりある程度の筋力トレーニングを含む運動療法を組み入れることが必要であることを示した結論であると思われます。