医療あれこれ

睡眠不足で認知症になる

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 睡眠不足は肉体的・精神的な不安定性が増し、アルツハイマー病などの認知症になるリスクが高くなるのではないかということはこれまでも指摘されていました。今回アルツハイマー病の人の脳に蓄積されるアミロイドβという異常タンパクの量を正確に把握し睡眠不足の有無との関連を研究した論文が公表されました。

 研究を実施したのは米国の研究者たちで、健康な成人の男女20人(平均年齢40歳)で、よく睡眠をとった日と一睡もしなかった翌日の脳へのアミロイドβ沈着を測定して比較検討したのです。アミロイドβ沈着は悪性腫瘍の存在を知る検査として知られるPET(陽電子放射断層撮影)検査を用いて、アミロイドの沈着を調べるアミロイドPETという技法を用いました。

 その結果、十分に睡眠を取った翌朝と比べて一睡もしなかった翌朝には脳内のアミロイドβの蓄積量が統計的に有意に増加していることが分かったのです。また、この蓄積量増大は、大脳のうち記憶に関連する海馬や感覚情報を伝達する視床などの領域で認められたということです。

 別の専門家は、脳神経細胞が活動しているときにはアミロイドβが蓄積しつづけることを指摘しています。ただし不眠の後、ぐっすり眠ることにより蓄積したアミロイドβが減少してくるのかどうかについては今回の実験からは明らかにされていません。またアルツハイマー病では脳にアミロイドβが蓄積していることは事実ですが、これが本当にアルツハイマー病の原因であるのかについてはいまだに意見が分かれるところです。

 いずれにせよこの研究結果は、良い睡眠を規則正しくとることは心身が健常に保たれることにつながるという、これまでの私たちの想定を支持するものであることには間違いがありません。

引用論文:Shokri-Kojori E et al. ProNAS on line, 2018, April 9.