医療あれこれ
歯周病が脳梗塞の原因になる
以前に、このサイトで虫歯菌が脳出血をおこすことをご紹介しました。(2017年2月12日付医療あれこれ)そこでも少しふれましたが虫歯菌といわれるミュータンス菌は血小板の働きを抑制することから出血しやすい状態を引き起こすのに対して、虫歯菌とは正反対に歯周病の原因となる様々な細菌は血小板の働きを強めることが知られています。今回、この歯周病菌が脳の血管内で血栓ができる脳梗塞を発症させることがアメリカの大規模臨床研究で明らかにされたという報告がありました。
約1万5800人のアメリカ人のうち、脳卒中にかかったことがなく自分の歯をもっている人6,735例(平均年齢62.3歳、女性55%、白人81%、黒人19%)について、15年間追跡調査し歯周病の重症度と脳卒中発症の関係が解析されました。
その結果、6,735例中299例が脳卒中を発症したといいます。脳卒中の内訳は、通常の脳梗塞である血栓性脳梗塞が140例、不整脈などの心疾患が原因で発症する心原性脳塞栓症が79例、サイズが小さい脳梗塞であるラクナ梗塞が61例、そのほか19例でした。これらはいずれも脳血管が血栓で閉塞されることにより発症するものです。一方、歯科受診と脳梗塞発症の関係では、定期的に歯科を受診している群では、歯科受診が不定期な群に比べて有意な脳卒中リスクが低下していたそうです。さらに歯周病が重症であるほど脳梗塞のリスクが高まることも示されました。
これらのことから、歯周病が脳梗塞のリスク因子であることが示されたことと、定期的な歯科受診が脳梗塞の予防に有用である可能性が示されたと発表者は述べています。歯や口腔内を健康に保つことが脳血管障害の予防につながることが明らかにされたと考えられます。
引用文献:Sen S. et al. 2018.1.15 Stroke on line