医療あれこれ

最近の若者は大人の経験が遅い?

 現代の中高生は飲酒、デート、性行為、アルバイトなど「大人になってからの経験」をしたことがある者の割合が減少しているという学術報告がありました。ただしこれはアメリカの13歳~19歳の男女約830万人を対象としておこなわれた研究結果です。報告者はサンディエゴ州立大学心理学教授のJean Twenge氏らで、1976年~2016年の収集資料を解析しています。

 例えば、日本では高校3年生にあたる年齢の中高生で比較すると、2010年以降の者は、それ以前の中高生と比べて、飲酒やデート、性行為、アルバイト、自動車運転、親の同伴なしでの外出といった「大人の経験」をしたことがある者の割合が低いことが分かったそうです。また、この傾向は性別や人種、社会的、経済的状況、居住地域などに関係がなかったといいます。

 飲酒やセックスの経験がある中高生の減少は、社会的にみて悪い傾向ではないとも考えられますが、成人になる前に経験しておいた方がその後の社会生活には必要であると思われるアルバイトや異性との付き合いなどを経験したことがない若年社会人が増えてくることは決して好ましいことではありません。研究報告者のTwenge氏も「若年者の成長が遅いと、自立心を養う経験が全くないまま大学に進学し、就職することになる可能性がある」と指摘しています。

 ニューヨーク大学ランゴン医療センター小児精神科のYamalis Diaz氏も「最近の学生は、学業成績は優秀でも、自分で計画を立て時間を管理したり、問題を解決するといった基本的な能力に乏しい者が多い」とコメントしています。さらに、「若者は大人と同様の責任を負う経験や、同級生たちと付き合う時間が少ないと、大人になった時に問題だ」と述べています。

 この研究はアメリカ人を対象としているので、必ずしも現代日本人にあてはまるとは限りませんが、高校、大学での学業成績は優秀なのに、専門職の仕事をさせると応用が効かないなど、学業成績と社会人としての能力に解離のあることが最近よく見られます。自由な学生生活が少なく、受験のための勉強に明け暮れている場合が多いといった現代の問題が関係しているのでしょうか。

引用文献:Twenge, J. M. and Park, H. (2017) Child Dev. doi:10.1111/cdev.12930