医療あれこれ
咽喉頭逆流症について
胃食道逆流症(GERD)は、胃液が食道に逆流する現象です。胃液はよく知られているように胃酸のため強い酸性ですから、胃の壁は酸性でも大丈夫なような構造になっています。しかし食道は普通なら食物が通過するだけですから、胃から酸性の物質が逆流してくると食道の壁は障害され、逆流性食道炎をおこしてしまいます。以前にこの項で、逆流性食道炎の発症は自律神経障害があったり唾液の分泌量が減り胃液の中和ができにくくなることが関係しているとされていることなどをご紹介しましたが(医療あれこれ: 2013.6.24)、この治療としては胃潰瘍の治療薬でもあり胃酸分泌を抑制するプロトンポンプ阻害薬(PPI)などが用いられます。逆流性食道炎の原因となる胃食道逆流症(GERD)の患者数は近年増加しているとされています。
今回ご紹介するのは、胃液の逆流が食道を上方に駆け上がり、のどまで達し、食道の前方にある気道へ逆流してしまう咽喉頭逆流症です。胃酸を含む胃内容物がのどに逆流することが原因で、咳がでる、声がかすれる、のどが詰まったような感じになる、さらに口の中まで胃酸が逆流すると口の中まで酸っぱいといった症状が出現します。また咽喉頭逆流症の症状は、胃酸が直接のどに逆流せず食道までで留まっていても、逆流性食道炎の症状が食道の自律神経を刺激して、これらの症状が出現してくるとされています。症状は夜間に出現することが多いのですが、日中にみられることも少なくありません。
咳がでるからといってカゼと考えてしまうと診断はできません。胸やけなどの症状があるかどうかなどの症状を確認することが大切で、咽喉頭逆流症が疑われたら内視鏡検査などで診断することになります。上述の胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用してもらって1~2か月で症状が改善してくるようなら咽喉頭逆流症であることが強く疑われることになります。