医療あれこれ

リウマチ性多発筋痛症

最近、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica; PMR)という病気が話題になっています。PMRは、50歳以上ことに70歳代の高齢者に多く発症し、肩の痛み、上腕や大腿の体の中心に近い部分の痛みや朝のこわばり、微熱、倦怠感、あるいは場合によってはうつ症状が現れる病気です。病名にリウマチということばが入っていますが、一般にいう関節リウマチとは発症機序が似ている部分はあるものの別の病気です。また、筋痛症といいますが筋肉だけでなく関節の痛みも強い病気です。これまで肩が痛いため上肢を挙上することが制限される病気として、いわゆる四十肩や五十肩といった肩関節周囲炎がよくみられましたが、PMRはこれより発症年齢が高齢で、女性に多い(男女比は男:女=1:2~1:3)特徴があります。欧米人では50歳以上の人口10万人当たり50人程の年間発症率とされています。日本人での正確な発症率はなく、50歳以上人口で約1.5人とされていましたが、徐々にPMRと診断される例が増加している傾向にあると思われます。

特徴的な症状は筋肉痛です。筋肉の痛みがあって左右の腕が挙がりにくくなった、太ももの筋肉痛もあり体全体が動かしにくくなった、などの症状を訴えます。症状は比較的速く進行し、発症してから2週間位でピークに達します。

診断は、症状とともに血液検査、またX線検査が必要です。しかし関節リウマチのようにリウマチ因子が陽性にでて診断するなどの項目はありません。一般的な炎症を示す血液検査や、関節リウマチでは陽性に出るはずの項目が陰性であることから、関節リウマチではないなどの除外診断をおこなうしか方法はないのです。骨のX線検査などもPMR以外の病気ではないことを確認するための検査ということになります。

治療としては、副腎皮質ステロイドホルモン剤が著効することが知られています。症状の重症度にもよりますが、大量のステロイドが必要であることはまれで、多くの場合、少量~中等量(プレドニゾロンで一日1020mg)用いられることが多いようです。ステロイド投与開始から比較的早期に症状は改善していき、最終的に1年以内にステロイドを中止することが可能です。関節リウマチでは、抗リウマチ薬を長期間定期的に使用することが必要であることとは大きく異なります。PMRという病気そのものによって死亡に至ることはまずありませんが、長期的にみるとステロイドの副作用(感染症、糖尿病、高血圧など)には注意する必要があります。医療者側も、上述のような症状を訴える人に対して、これまであまり目にすることがなかったPMRの可能性を考慮に入れて診断・治療をおこなう必要があります。