医療あれこれ

リハビリテーションと予防医学

 リハビリテーションとは意味的には障害された状態を再び元の状態へ戻す、あるいは障害が残ってもできるだけ元の生活レベルに戻すということです。語源は、フランスの国民的ヒロインであるジャンヌ・ダルクが魔女裁判(宗教裁判)で火あぶりの刑に処せられ19歳で死亡してしまった後に無実が証明され復権した時、「リハビリテーション」という言葉が用いられたことによります。リハビリテーション(rehabilitation)の"re"は再びという意味、"habits"はラテン語の形容詞で「達する」とか、人間にふさわしいということ、さらに"―ation"は「~にすること」を意味します。つまりジャンヌ・ダルクの名誉が死後になって復権したという意味です。これを医療で考えると、病気が原因でそれまでの生活から大きく変化がおこってしまったとしてもそれを元に戻そうとするのがリハビリテーションの原則です。社会的リハビリテーションとか職業的リハビリテーションという言葉がありますが、病気に陥った人をどのようにして社会へ復帰してもらうかということを考えるものです。この理念が今日まで、リハビリテーションの大きな柱の1つとなっています。

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 一方、病気については、それが発症したことを早期に発見し治療すれば、当然のことですが回復が早く病気を完全に治癒させることができる可能性は高くなります。しかし病気の早期発見よりも、そもそも病気にならない方がよいということは言うまでもありません。病気になることを予防するのが予防医学といわれるものですが、これには主として、①病気の発生そのものを予防する一次予防、②病気が発生していたとしてもこれを早期発見し治療することにより重症化を防ぐ二次予防、そして③病気になってしまったとしてもその再発を予防して生活の質(QOLといいます)を保つ三次予防、の3つがあります。一次予防は健康診断などで病気がないことを調べ、健康増進のための生活をすること、そして二次予防はガン検診などでガンがあっても早期に発見して治療してしまうことです。また発生してしまった病気の再発予防などは三次予防の典型です。これらのことから考えると理学療法士、作業療法士あるいは言語聴覚士が実践しているリハビリテーションは、例えば脳卒中をおこして麻痺した手足を動かせるようにしようとか、言語障害がおこってしまったけれどこれに対して言葉を自由にしゃべれるように戻そうといったことの他に、二次的予防もふくまれ、広い意味で三次予防の性格も含まれていると思います。

 しかし上述のように、病気や障害が発生しないようにすることの方がはるかに大切です。例えば高齢者においては、転倒して骨折してしまうと場合によっては寝たきりになってしまいますが、これを予防するため、日頃から足腰の筋肉が衰えないように運動療法をおこなうことが有効です。また肥満やメタボリックシンドロームの予防には適切に処方された運動を続けることは必須です。これらは一例ですが、病気や障害を予防する、また健康増進を図るため理学療法や作業療法の知識・技術を活用していくことがこれから先らに重要なことになってくるものと考えられます。