医療あれこれ
健康経営について
最近、健康経営ということばを耳にされた方も多いかと思います。健康経営とは企業とくに大企業の持続的な成長を図るためには従業員の健康に配慮した経営が必要であることを意味します。企業の活動は従業員の雇用を通じて、企業で働く人の健康と社会に大きく貢献しています。企業として利潤の追求のみをしていては健全な経営はできません。従業員に対して規則正しい健康的な生活ができるような労働条件を提供することにより人々が働きがいをもって生活する、また社会に対しては人と環境に配慮して貢献することが求められ、このことが企業の社会的責任を果たしていることになるのです。
これまでは健康や安全の問題について、企業が従業員に課した労働が原因で健康障害が発生した場合、労働災害として企業は従業員に対して責任をとるという考えが一般的でした。つまり起こってしまった健康障害については企業が責任をもって対応するという受け身の考え方です。それに対して健康経営の観点では、企業は利益を生み出すための経営と同時に、その企業利益を生み出している源である従業員における心身の健康を保全するための積極的な投資(健康投資)をすることにより、効率的な経営を確立していこうとするものです。
もしその企業が従業員数人しかいない零細企業だったとしましょう。従業員のうち誰か一人が病気やけがで十分な就業ができなくなれば、企業の仕事は著しく障害され、その結果、得られる利益も大きく減少してしまうことも想定しなければなりません。大企業であれば、いくらでもそんな代わりの人材がいるので心配はいらないと言ってしまえばそれまでですが、従業員の健康を守ることはその企業の利潤追求を推進する第一関門になると考えるべきではないでしょうか。
従業員に積極的な健康投資をおこない、その結果として健康寿命は延び、医療費も削減され、社会に対する大きな貢献をすることにつながるのです。経費削減だけではなく、企業の生産性向上、各従業員の創造性向上、さらに社会に対する企業イメージの向上につながる効果が得られると考えられます。「企業は人なり」といわれますが、企業の経営者と従業員がお互い力を出し合って企業活動を支えることが成熟した社会を作っていくために必要なことだと、健康経営研究会の理事長 岡田邦夫先生は述べられています。
文献:岡田邦夫 健康経営推進ガイドブック、経団連出版(平成27年)