医療あれこれ

友達が少ない日本の高齢者

 このほど世界保健機関(WHO)2016年版の「世界保健統計」を発表しました。それによると2015年には男女合わせた日本の平均寿命は83.7歳で、調査できる情報が得られた国の中で首位でした。これで日本は20年以上連続して首位にランクされていることになります。以前からこの項でも述べていますが、本当は「平均寿命」より健康な人だけの「健康寿命」が最高であることが望ましいのですが、今回はこの「健康寿命」も74.9歳と世界一であったことが報告され大変喜ばしいことです。

 ところで、これとは別に、内閣府の調査で「日本の高齢者は友達付き合いが少ない」という傾向にあることが明らかにされました。これは日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの4カ国において、施設で暮らす人を除いた約千人を対象として2015年の10月から12月におこなわれた意識調査の結果をまとめたものです。これらの調査結果が含まれる2016年版「高齢社会白書」として政府から公開されました。

 その結果、下に示すグラフのように、困ったときに家族以外で助け合えるような親しい友人が「いない」と答えた人の割合は日本が最も多かったのです。

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 また近所の人と病気になったときに助け合うと答えた割合はドイツが最も多く31.9%だったのに対して日本は最下位の5.9%で大きく差がつきました。さらに老後の備えを50歳代までに「何もしていない」と答えた人の割合も日本(42.7%)、ドイツ(26.1%)、スウェーデン(25.4%)、アメリカ(20.9%)で日本が圧倒的に多いとの結果でした。老後の備えとして今の貯蓄や資産が「足りない」と答えた人の割合も57%と、他の3カ国と大差がついてしまいました。

 「高齢者が地域社会から孤立しないように社会参加を促す取り組みが必要だ」とか「壮年期から老後を見すえた準備をすることが重要だ」といいますが、ことはそれほど簡単なものではないでしょう。少し前から問題になっていることですが、中年以後は新しい友人を作ることが難しいと思っている人が多いといわれます。学生時代のように、共通の話題が多いわけでなく、相手の都合なども十分考慮にいれ分別ある付き合いをするべきだということが判る年代になるとなかなか新しい、しかも親しい友人はできないのでしょう。ましてや高齢者になって新しい友人が簡単にできる可能性は低く根本的に考え直す必要がある問題だと思われます。

(2016520日共同通信社配信)