医療あれこれ
高地住民は肥満になりにくい?
以前から標高の高い地域の居住者では肥満率が低いことが知られていましたが、このほど、これを疫学研究で調査した結果がスペインの研究者から発表されました(欧州肥満学会 ECO2015、5月6日~9日、チェコ、プラハ)。これはスペインの体重超過や肥満でない人、9千人以上を対象として平均8.5年間追跡調査したものです。対象者の居住地を、①標高124m未満の低地、②124m~455mの中、③456m以上の高地、の3郡に分けて観察期間(8.5年)に過体重または肥満になった人が何人いるかを調べたものです。
その結果、標高456m以上の高地住民では、124m未満の低地住民に比べて、肥満になる率が13%低かったということでした。ヒマラヤやエベレストに住む人たちは、高地では空気がうすく酸素欠乏状態になることから食欲を抑制するレプチンという物質の分泌が高まり、その結果食欲が抑制されて食事をしなくなる、とくことが知られていました。しかし今回の研究では、標高何千mという高山ではなく、わずか標高456mの程度でも肥満リスクが抑制されるというものです。高山では以前にこの項でもご紹介したように、標高何千mでは血圧の上昇があることが知られており(2014年8月30日付)健康被害の原因にもなりますが、少しだけ高いところに住んでいると肥満になりにくいという点が興味深いものです。
ただし、話題の「あべのハルカス」でも高さは300mですから、「高層マンションの上階に住んでいたら少しでも肥満にならなくて済む」ということにはならないので念のため・・・
出典:Medical Tribune, 2015.5.11