医療あれこれ

平成年間の画期的進歩:C型肝炎治療

 平成における肝炎治療の進歩を振り返ると、C型肝炎に対する医療の飛躍的進歩は画期的なものでした。今から30年以上前にはウイルス性肝炎の原因ウイルスは、食品や飲み水などから感染するA型肝炎ウイルスや、血液を介して感染するB型肝炎ウイルスが知られていました。しかしA型、B型以外に感染により肝機能を悪くするウイルスがあるらしいということで、昭和の終わり頃まではこれを非AB肝炎ウイルスと呼んでいました。

1989年平成元年に改元と時を同じくしてC型肝炎ウイルスが発見されました。それまで肝機能悪化があると、安静にして栄養補給や静脈注射の継続などにより肝機能悪化を抑制して肝硬変や肝ガンの発生を抑止する医療しか施すことができなかった肝炎治療に新規の抗ウイルス治療が開発されていきます。

1992年(平成4年)に初めての抗C型肝炎ウイルス療法として登場したのが、インターフェロン(IFN)です。それまでウイルス自体を除外する方法はなく、経過とともに慢性肝炎から、もう後戻りができない肝硬変の状態となり、食道静脈瘤の破裂による、肝機能がすっかり低下してしまう肝不全の状態や肝ガンの合併などが原因で死の転帰をとる人がほとんどでした。そこで登場した抗ウイルス療法は画期的でしたが、残念ながら日本ではIFNが聞かないタイプのC型肝炎ウイルスが90%以上であることが明らかとなりました。IFNによりウイルスを完全に撲滅できる症例は5%未満だったのです。

 2001年(平13年)、注射薬のIFNとリバビリンという飲み薬を併用することにより20%の例でウイルスに対し著効することが示されました。さらにペグインターフェロンという新しいタイプのIFNが使用可能となり、リバベリンとの併用により完全に有効だった症例は50%を超えました。つまり治療によりC型肝炎が治る人が半分になったのです。

 さらに2014年(平成26年)になるとIFNなしで、ダクルインザやスンベプラなどという飲み薬を半年間服用するだけでC型肝炎ウイルスを体から除去できる確率は90%に及ぶという画期的な治療法ができました。ついで2015年(平成27年)にハーボニーという薬が使用可能となりました。これは薬代が高額であり問題にもなったのですが、100%の治療成功率を達成したのです。ウイルス自体の発見から平成の30年にしてC型肝炎は完全に治癒させることができる疾患になったのでした。

 しかしC型肝炎が完全に制圧できるというのは難しいかもしれないと専門家はいいます。薬剤耐性ウイルスなどが別の問題として残っているのです。またC型やさらにB型ウイルスも関係しない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝;NASHと呼ばれています)が制圧すべき大きな課題として残っています。この脂肪肝はお酒を飲まないのに発症してくるもので、現在のところ治療薬はありません。30年前のC型肝炎のように、食事制限をして運動をしてもらうしか治療法がないのです。このような肝炎治療に関する解決すべき問題点はありますが、ウイルス発見から始まったC型肝炎治療は平成年間に飛躍的進歩を遂げたのです。

(引用 M3 平成の医療史30年 https://www.m3.com/clinical/news/659244