医療あれこれ
5月25日は世界甲状腺デー
世界各国の甲状腺学会は、甲状腺疾患の意識向上や治療の普及に努めることなどを目的として、世界甲状腺デーを制定しています。この目的は他にも、甲状腺疾患治療の理解を向上させ、甲状腺疾患の予防と教育の必要性を強調する、さらに実は甲状腺疾患は高い有病率があることを強調するなどの目的を持っています。甲状腺疾患の有病率は世界でみると約3億人、日本でも700万~1000万人といわれ、あまり一般的に知られていませんが、以外に高い有病率です。このうち、甲状腺腫瘍が15~20人に1人、橋本病などの甲状腺機能低下症は成人女性の20人~30人に1人、甲状腺機能亢進症は200人~300人に1人で、実際に治療が必要な甲状腺疾患の患者数は200万~300万人ともいわれています。
甲状腺の異常をチェックする方法としては、血液検査他による甲状腺関連ホルモン濃度の測定、甲状腺に対する抗体などの検査、さらに超音波エコーなどによる画像検査などがあります。治療法として甲状腺機能低下症に対しては甲状腺ホルモン補充療法、機能亢進症では抗甲状腺薬投与や外科治療、放射線治療、甲状腺ガンなどの悪性疾患には外科治療、放射線治療のほか特異的に作用する分子標的薬を用いた薬物療法など、幅広い治療法が選択できるようになっています。これらの情報をより広く知ってもらうことも世界甲状腺デーの理念でもあります。
また毎年テーマを設定して、甲状腺領域のうちでも特にそのテーマに特化した活動を展開することになっていますが、2016年は「子供」がテーマに指定されています。日本では特に福島の原発事故に起因する子供の甲状腺ガン発症が大きな問題となっており、時を得たテーマと考えられます。
日本甲状腺学会では、世界甲状腺デーに向けてシンボルマーク(バタフライリボン)を作成、また「5月25日は世界甲状腺デー」を示したポスターを作成し日本各地の医療施設に配布します。さらに5月21日には東京(ホテルJALシティー田町)で開催される公開市民講座の公演をおこなう予定となっています。(http://www.japanthyroid.jp/doctor/promotion/index.html)
出典: M-Review Highlight 2016.4.18. 学会アイ